2013年9月1日日曜日

ガッチャマン

1回観てきました。


『ガッチャマン』予告編


※『科学忍者隊ガッチャマン』世代ではないので、比較はできないししてません。
「『ガッチャマン』おもしろかった!」という人は読まないほうがいいです。

映画.comの作品紹介ページからあらすじを引用。
謎の侵略者により、わずか17日間で地球の半分が壊滅した21世紀初頭。人類は絶滅を回避するため、「石」と呼ばれる不思議な結晶体に望みを託す。「石」の力を引き出せる「適合者」として集められた若者たちは、特殊な訓練を強制され、やがて「石」を操る忍者「ガッチャマン」として侵略者との過酷な戦いに身を投じていく。

ちょっと前置きが長くなります。

個人的な感覚だと、去年は上半期にはあまり面白い作品が無くて、下半期に集中してたような印象。
それに比べて今年は毎月のように面白い作品が公開されています。

特に今夏は、飛行機マニアの作った飛行機映画カンフー映画マニアの撮ったカンフー映画怪獣映画オタクの撮った怪獣映画なんかが公開されてて、どれも楽しかったです。
他にも人気SF作品のリブート2作目とか、あのアメコミヒーローのリブート期待よりはるかに面白かったバディ・ムービーなんかもあります。

そんな強豪作品ひしめく中で公開された、日本の有名なヒーローもののリブート作品の本作

私は毎月の(なるべく)初めに観たい作品の一覧をまとめているのだけれど、『ガッチャマン』についてはこんなコメントをつけていました。
ガッチャマンを見ていたわけではないので、正直なところそこまでは抵抗がないっていう。
たしかにこの通りだったんですよ、この時は
先にも言ったように『科学忍者隊ガッチャマン』のビジュアルとテーマ曲くらいは知っていてもアニメ自体は見たことが無かったし、予告編を見て「リブートだったらこんなもんだろうなぁ」くらいの期待だったのです。

ガッチャマンの5人

で、初日に観てきたのですが、真っ先に思ったのは、

ガッチャマンに思い入れが無くてまだ助かった方だな

ということでした。
思い入れがあったら憤死してるよ!


何度も言ってますが、TVアニメの『科学忍者隊ガッチャマン』は見たことがありません。
それでも、この作品にはリブート元への思い入れや敬意はまったく無いということは伝わってくるのです。

主演には一応ヒーローもの出身の人たちを使ってるんです。
健(松坂桃李)がシンケンレッドだったことだって、ジョー(綾野剛)がスパイダーオルフェノクだったことだって、竜(鈴木亮平)が変態仮面だったことだって分かってるんですよ。

それでも特にこっちの気持ちは盛り上がらないというね…。

健は常に何かうだうだ言ってるだけだし。ジョーはクールに登場したかと思いきや、割と早い段階でみんなと打ち解けるというねw

大鷲の健(元・シンケンレッド)
葛藤を抱えたリーダーってことなんでしょうけど…。

コンドルのジョー(元・スパイダーオルフェノク)
ジョーのキャラは常に不安定だった印象。少なくとも役者の問題ではないと思う。

みみずくの竜(元・変態仮面)
股間の締め付けでパワーアップする設定は無し。

ヒーローもの出身の人を使ったからといって特に期待できる効果が無いし、何より健とジョーの顔の系統が割と似てる気がするので、見た目でキャラクターの対比を感じませんでした。
この二人の対立軸がはっきりしないというのは後の展開への影響が大きいように思いました。

あとはチビキャラの甚平(濱田龍臣)と紅一点のジュン(剛力彩芽)もいるけれど、これと言って興味がわくようなキャラクターではなかったです。
燃えないし萌えないんですよ。

白鳥のジュン(元・ワンリキー)
彼女まで健とジョーの顔の系統に似てるってのはどうなのだろうか。

燕の甚平(元・坂本龍馬)
龍臣くんは『きいろいゾウ』にも出てましたね…。

『ガッチャマン』というとあのテーマ曲が真っ先に浮かびます。
あの曲をそのまま使うのは厳しいとしても、ちょっと今っぽくアレンジ(これも結構難しいとは思うけれど)した曲が劇中で流れるのかと期待してたんですけど、一切ありませんでした。

『科学忍者隊ガッチャマン』オープニング

で、本作のエンディングはBUMP OF CHICKENなんですよ。
いま改めて曲を聴いてみたら、さすがに昭和ノリとはいかないけど、今っぽいヒーローものならいけるのかなぁという感じですね。
ただ、言い方は悪いけど、どうしても「バンプ聴いてるような連中」の影がチラついちゃう。

イケメンの起用といい、この選曲といい、「リブート元への目配せ」は完全に排して「若い層(主に女性)狙い」という方針がどうしても感じられてしまいました。
「リブート元への思い入れや敬意はまったく無い」と感じてしまうのも、この辺りが原因なのではないかと。

「リブート元への目配せが無い」ってのはちょっと言い過ぎかもしれない。
一応、作ってる当人たちは気が利いてると思っているらしいシーンがあるにはあるんですよ。
ただ、別に思ってるほど気が利いてないし、むしろその程度で目配せしてると思ってるならいっそのことそんなシーンは無くしてくれよ。

例えば、序盤にあるおもちゃ屋で健とギャラクターの一人が対峙するシーン。
二人がたまたま突っ込んだその店には、公式ショップかというくらい竜の子プロ作品のおもちゃが並んでます。
ヤッターマンのメカとか出しただけというのもどうかと思うけど、何よりも腹が立つのはこのシーンが出てくるタイミング。おそらく作り手側は「緊迫した戦闘シーンに緩急をつけるためのハズしのシーン」としてこのシーンを用意してるつもりだと思うんですよ。
ただ、そもそも戦闘シーン自体に緊張感が無いから、ただでさえ平板な展開にさらにノイズが混じったような印象しか残さない。

MOVIE大戦アルティメイタムのフォーゼパートでやってたパルクールアクションの緩急を見習うべき!

『仮面ライダー×仮面ライダー ウィザード&フォーゼ MOVIE大戦アルティメイタム』予告編

それから、終盤の「科学忍法、火の鳥だ!」っていうシーンね…。
それまでにも甚平が「科学忍法、○○だ!」と言うシーンはあるのだけど、ネーミングセンスは無いというギャグのシーンなんです(面白いかどうかは別にして)。
その流れでこのシーンを出されても、「なんかダサいなぁ…」としか思わなかったです。

あと、これは完全に私の記憶違いだと思いますが、ガッチャマンたちの乗ってたメカは敵の兵器から離脱する時に燃えて「火の鳥」になっていたような…。
まさかそんなことは無いと思っていますが、確認のためにもう一度この作品を観る気はありません。

NIPPS "God Bird"
まったく関係ないですが、口直しに貼っておこうと思います。


客層の選定の難しさなどあるのでリブート云々の部分には目をつぶるとしても、「典型的な(日本の)VFX依存作品」だなという印象は変わりませんでした。

VFXを使ってるシーンの描き込みは確かにすごいですよ。敵メカのボディの質感だとか、崩壊する建物だとか。
どうせならジュンのおっぱいもVFXで何とかしてくれたら良かったのに…。

ただ、そのVFXは殺陣のシーンでは役に立ってないというね…。
動きはモロにワイヤーという感じでジャンプと着地がふわふわした感じ。ガッチャマンというとひらりと飛んで攻撃するイメージがあるけれど、攻撃の描写の気持ちよさは全くと言っていいほど感じなかったような。

あと、5人の特性がそれぞれ分かるような戦闘描写が必要だと思うのだけれど、その特性が効果的に見えるようなシーンが無いんですよ。せいぜい竜のパワーと甚平の「変わり身の術」があった程度。
冒頭の戦闘シーンはつかみになる重要な場面になるはずなのに、ここが全くできてないのは致命的だと思いました。

着地するガッチャマン
マントの動きが不自然、というかあんまり動いてなかったような。

それから、通常のセットを使ったシーンになった途端に画面がスッカスカになります。
最近の作品で分かりやすい例だと、『あしたのジョー』の少年院のシーンですかね。なぜか院長の部屋まで牢屋と同じ色で、しかも机や椅子の配置がバランス悪くていかにも「倉庫」にしか見えないっていう。

ベルクカッツェ(初音映莉子)とジョー
「室内に何も置かない」というのは日本のVFX重視の監督に共通している気が。

特に施設内のシーンのスカスカした感じは酷かったです。
研究所にしては何か開発したりしてる描写はないし、病院にしてはおしゃれ臭が強いというどっちつかずな印象。

施設内の雰囲気
施設内は白が基調のスカスカした空間。

前半でギャラクターとの戦闘を終えたガッチャマンたちが、施設内でメディカルチェックを受けるというシーンがあります。
ジョーと竜と甚平が検査を受けながらくっちゃべったあと、手前のスペースに移動するとそこには休憩所みたいなスペースがあります。
そもそもこのスペース必要なのか、ということは措いておくにしても、そこにあるスツールがおしゃれこじらせたみたいなデザインでさぁ。さらに運が悪いことに(良いことに?)、ちょうどこの作品を観た劇場の飲食スペースにあるスツールとよく似ていたおかげで笑ってしまいました。


空間の撮り方だけでなくて、人物の撮り方にも問題があると思っていて。
この監督の特徴なのかどうかは分からないけど、困ると「顔のアップ」をやたらと使うんですよ。
ただ、ダークヒーロー路線にしているせいもあってか、アップにしてもたいてい無表情で何かを表現するわけではありませんでした。

特にアップショットが逆効果だったのはジュンです。
この作品観るまでは、剛力彩芽に対して別に嫌な印象は無かったんです。ランチパック好きだし、ちょっと良かったくらいでしたよ(誇張)。
彩芽ちゃんはよく「ゴリ押し」だとかなんとか言われてるけど、それって彼女の問題ではなくて、オスカーが得意にしてるやり方じゃないですか。ちょっと前なら武井咲だって同じようにやってたわけだし。

ただ、武井咲と比べると、やっぱり性癖の分水嶺というか、彼女をアリとするか否かでその人のストライクゾーンが推し量れる感じがあるじゃないですか。
そんなビジュアルに加えて、表情が3パターンくらいしかないんですよ。さらにはあの「健スキスキ!」的なウザキャラじゃないですか。そんなキャラクターのどこを愛せば良いっていうんだよ…。
コイツがガッチャマンのスーツを「醜い!」と罵ったときは、本当にイラッとして舌打ちしかけました。

話の脱線ついでに他のキャラクターについて。

竜と甚平はそんなに印象が無いのでさておき(これも大問題だけど)、この文章の始めのほうにも言ったように、「健とジョーの対立」が話の主軸の一つになるはずなのにいまいちはっきりしないんです。
「二人のビジュアルが似ている」という他にも、二つくらい原因があると思うのです。

対立する(はずの)健とジョー

一つはダークヒーロー路線との食い合わせの悪さ
戦隊ものみたくヒーローが複数人いる場合、この路線は合わないと思うんですよ。ダークヒーローものは「単独のヒーローが戦いつつも自身の正義について悩む」というのが基本形です。
もしこれを4人とか5人でやったら、全員がうだうだ悩んでるように見えてただダラダラするだけです。
複数人のヒーローものならば、『アベンジャーズ』みたく「ノリも思想も違うヒーローが対立しつつも最後には協力する」という流れにしないと2時間も物語るにはなかなか厳しいと思うのです。

もう一つは、健とジョーが対立しているそもそもの原因が「過去に幼馴染のナオミ(初音映莉子)を敵の攻撃で失った」ということ。
ダークヒーロー路線で「ヒーローの意義」について葛藤するのかと思いきや、結局は痴話喧嘩に終始します。
「好きだった幼馴染みがどうこう」とかいう私情はひとまず措いておく所から始めませんか?


敵に魅力が無いのも痛いところ。
ギャラクターから亡命するイリヤ(中村獅童)はいかにもシドウ・ナカムラといった感じでしたよ。

組織を裏切るギャラクターのNo.2・イリヤ(中央)
勿体つけた感じがいかにも中村獅童という演技でした。

話がズレるけど、健とジュンが彼に接触するために仮面舞踏会へ潜入するというシーンがあります。
仮面舞踏会がどういうものなのか詳しく知らないけれど、仮面を付ける以上は身分を隠すんじゃないの?だからこそイリヤはそこで待っていたんだろうし。
でも健とジュンは顔を出して受付を済ませるんですよ(この間に行われていたちゃちなスパイアクション展開には目をつぶるよ)。ということは、イリヤも受付を済ませてから会場に入ったのでしょうか。
いっそのことマスコリーダにしてバンバン闘ってくれたほうが楽しかったかも知れません。

TRF "Masquerade"
少年隊でも勝手にしやがれでも良かったのですが。

「健とジョーの幼馴染みのナオミは死んでなくて敵のボスになってました」という設定の陳腐さは百歩譲って見逃します。
ただ、ナオミの人選がねぇ…。

誤解の無いよう、一応言っておくと、初音映莉子には別に文句は無いんですよ。ビジュアル的には好きなほうだし、チャンスがあるなら土下座してお願いするレベルですよ。

ナオミ/ベルクカッツェ役の初音映莉子
ストライクですよ!

ただ、悪役が女性の場合、ヒロインとの対比が重要じゃないですか。
ヒロインがかわいい系なら、悪役の女はセクシー系とか。それこそヤッターマンのアイちゃんとドロンジョ様なんて代表的です(実写版もしっかりとこの対比を使ってましたね)。

参考:『ヤッターマン』のドロンジョ様(深田恭子)

でもこの作品ではジュンとナオミって割と似た系統の人なのですよ。どっちも薄幸顔の貧乳…。ベルクカッツェの衣装なんて胸元にわざわざ丸い穴を開けたデザインなのに。
まぁ『ヤッターマン』とは明らかに目指してる方向が違うし、今回はリアル寄りで行きたかったのかもしれないけれど、そういうサービス精神は忘れないでいただきたいものです…。

この二人が逆だったら良かったのかなぁ。いや、きっとそんな問題じゃないな。

『ガッチャマン』の剛力彩芽(左)と『終戦のエンペラー』の初音映莉子(右)
記者会見でまったく同じ衣装を着てました。

カークランド博士(光石研)がモロに日本人だったのはツッコミ待ちだったのかな。些細なことかも知れないけれど、こういうのってどうしてもノイズになります。
南部博士(岸谷吾朗)のビジュアルは色々言われそうな感じですが。いっそのことアレくらい思い切ってコスプレしてくれたほうが、観る側も気持ちを振っ切れると個人的には思いました。

カークランド博士(左)と南部博士(右)


ヒーローもの云々とか登場人物がどうとか以外にも、そもそも舞台設定が飲み込みづらかったです。

ギャラクターが地球に侵略してきたのは昨日今日の話じゃないはず。東ヨーロッパが攻撃を受けたシーンでは健はまだ子供なので、少なくとも10年以上は経っているはずだし。
それから、ギャラクターに唯一対抗できる【石】の効果も、健たち適合者が子供のときに分かっているはず。だからこそジョーが言うように「ガキん頃から自由を奪われ、訓練に励」んでいるわけじゃないですか。

そういう前提がありながら、ギャラクターと新宿で戦闘する冒頭のシーンでは、まず普通の兵士が前線に置かれてるんです。特殊な武装をしているわけでもなく。
「通常兵器はギャラクターに効かない」という設定を立ててるくせに、これはどう考えても納得いかない。

例えば、ギャラクターの兵士を足止めするために「明らかに過剰な攻撃(いきなりミサイルをぶちこんじゃうとか)を加える」とか、「ガッチャマンたちが使ってるよりは遥かに性能が劣るけど【石】を利用した武器を一般兵が使う」という描写があるとかなら、まだ納得できるのに。
そういう流れがあったら、それに続くガッチャマンの戦闘シーンで彼らの強さや兵器としての重要性も分かるのに。なんだかね。

ガッチャマンが守ろうとしている街の描写にも違和感があります。
冒頭では、東京は外国人を含む難民で溢れてるらしい描写があります。アジア系でない人たちがたくさん歩いていたり。

画像では分かりづらいですが、後ろには難民がたくさんいます。

戦闘が始まると、街に人がいなくなるんですよ。まぁ避難してるんでしょうね。
そう思っていると、先にも書いたおもちゃ屋のシーンが出てくる商店街らしきところには、普通にサラリーマンやおばちゃんなどの通行人が歩いてます。
街がどんな状況で、ギャラクターに対してどの程度の危機感を抱いているのか、冒頭だけでも状況が全くつかめないし、混乱してしまいました。もちろん話が先に進んでもこの辺りは良く分かりません。


最後にもう一つだけ。
本編が始まる前に、日本テレビの朝の情報番組『ZIP!』内で放送していたという『おはよう忍者隊ガッチャマン』が流れます。

"おはよう忍者隊ガッチャマン"

スチャダラパーのMC二人とか、しまおまほさんが声を担当しているそうで。中央線(の三鷹から東京寄り)や京王井の頭線沿いに住んでるような人にはグッと来そうな感じですね。

これとか『秘密結社 鷹の爪』みたいな「ゆる系フラッシュアニメ」が個人的には苦手ということはさておき、本編とは明らかに違うノリの短編を最初に見せられるわけですよ。
「ガッチャマンを知らない人向けのチュートリアル」とか、「本編を理解するための解説」という内容ならまだしも、全く関係の無いメタ的な内容だし。
こんなの見せられても混乱するだけだと思います。こういう構成って考えないんですかね。

ラストカットで「ギャラクターになりかけているジョー」の顔が出てきましたが、続編はマジでいらないです。

とりあえず、今年の夏は面白い映画がたくさんあるので、『ガッチャマン』観る余裕があるなら別の作品を観るべき!

適当に動画を載せて終わりにしようと思います。

Lupe Fiasco "I Gotcha"

Positive K "I Got a Man"

さらにオマケ。

A Taste of Honey "Rescue Me"

Nice & Nasty 3 "The Ultimate Rap"

大神 "大怪我"


※追記(2013/09/01)
「自分の感想をまとめるまで読まない!」と決めていた他のブログの記事を読んだのですが、「イリヤ=ベルクカッツェ」だったという件があったようで。イリヤが施設にしょっ引かれてくる辺りの20分間は超ウトウトしていたので全く覚えていませんでした(というか観てませんでした)。
でも、驚いたことに、この作品への感想は1ミリも変わらないんだぜ!!

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