2013年8月21日水曜日

箱入り息子の恋

2回観てきました。
とっくに公開は終わってるのでサラッと。


『箱入り息子の恋』予告編


いつものごとく、映画.comの作品紹介ページからあらすじを引用。
わずらわしい人付き合いを避け、職場と自宅を往復するだけの日々を送る市役所勤務の天雫健太郎は、彼女いない歴=年齢の35歳。そんな息子を見かねた両親は、本人たちにかわり親同士が見合いをする「代理見合い」をセッティングする。健太郎はそこで出会った今井夫妻の娘で、目にハンデを抱えた女性・奈緒子に生まれて初めて恋に落ちる。しかし、2人の行く末には思いがけない障害が立ちはだかり……。

映画1回目→ノベライズ→映画2回目という順番で観てきました。
話の内容はもちろん同じだけれど、映画の描き方の方が好みでした。

ノベライズの方は、小説という特性上、健太郎の主観からの視点が多く描かれていました。
内面を描かれるよりは、映画での「何を考えているのか良く分からない」主人公の描写が良かったかなぁと。

映画から話がそれてしまうけれど、このノベライズ本は市井監督との共著で前作『無防備』の主演女優の一人だった今野早苗さんがクレジットされてます。もう少し調べてみたら、監督の奥さんでもありました。
監督が髭男爵の元メンバーというのも驚きですよ。

さて話を戻して。

タイトルとかポスターのビジュアルだけを見ると、ふわっとした感じのユルい恋愛ものに思えるのだけれど、これがなかなかキツいところはキツく描かれているんですよ。

主人公の健太郎(星野源:右)とヒロインの奈穂子(夏帆:左)
このビジュアルとかフワッとしてるけど、違うんですよ。

幼い頃に病気にかかり失明した奈穂子
難病ものかと思うと、そうではないんですよ。

例えば、ヒロインの奈穂子の父(大杉漣)の態度や言葉遣い。

父は父なりに盲目の娘に気を遣って、収入が多い人とか娘がある程度は楽を出来るような相手と結婚させてたいと思っているんですよ。ところがお見合いの相手が完全にアウト判定していた健太郎だったので、プロフィールを見て初対面にもかかわらず罵倒し続けるというね。
単なるイチャモンならまだしも、「向上心が無い」など的確な欠点の指摘と人格否定を繰り返すので、腹が立つけど言い返せない。

これを見ていて、「話の展開上まったく関係なくてもいいからこのオッサン爆死しないかな」と思ってしまいましたよ。

お見合いの席での天雫家

お見合いの席での今井家

この「健太郎が散々罵倒された」という流れがあった後、健太郎が奈穂子とのデート中に交通事故に遭ってしまうんですよ。

実はお見合いよりも以前に出会っていた健太郎と奈穂子
いやーん運命感じちゃう!

奈穂子の母(黒木瞳)は健太郎との交際に理解があるのですが…

父は断固反対。
健太郎はデートがバレてしまい別れるよう強要されます。

事故後、今井家の三人が健太郎の病室を見舞うのですが、健太郎の母(森山良子)は帰るように言います。それでも帰ろうとしない奈穂子に「あなた、耳まで悪いの?」と吐き捨てます。

奈穂子の父への仕返しでもあるので気持ち良くもありますが、目の見えない奈穂子に対する言葉と考えるとかなりヒヤッとします。

この辺りの表現とか、『無防備』の出産シーンとか、倫理的にどうかというスレスレのラインでの表現が得意なのかと思いました。


キツさでいうと、個人的な話にはなってしまうけど、主人公の設定が他人事ではないというねぇ。
正確に当てはまる要素は無いんだけど、マジで笑い事じゃないですよ!

  • 彼女いない歴=年齢
  • 意識低い系
  • 35歳で実家暮らし
  • コミュ障

  • 主人公・天雫健太郎
    なんか箇条書きを見てるみたいになっちゃいまいしたね。

    こんな男の恋愛話なワケですよ。
    ただでさえ自意識過剰だから「他人からどう思われているか」(そこに客観的な根拠がないとしても)に捕らわれすぎて一歩踏みだすことなんて無いのですよ。

    そんな男が、この意識を無くすことで踏み出せるようになるのですよ。
    ※これもそこそこ危ういところですね。相手が盲目だったからこそ「自分がどう見られるか」を考えなくて済むという。

    本来の意味とは違うだろうけど、「恋は盲目」という感じですかね。

    予告編でも使われている「健太郎が職場で叫びだす」というシーンは、本編を観るまではダメだなぁと思ってました(感情の昂ぶりを叫ばせることで見せるような演出があまり好きじゃない)。

    でも、健太郎は今までは初めから誰かと恋愛できるなんていう可能性を予め捨てて生きていて、何かの拍子でたまたまその可能性を得てしまって、今度はそれを失いそうになっているのです。

    そりゃ叫ぶじゃないですか!
    叫ばずにはいられないですよ!

    本編では健太郎がカエルを(おたまじゃくしの頃から)飼育しているシーンがたびたび登場します。「表情が見えづらい」とか「子供の頃から住む箱と餌を与えられている」という点で両者が重ねて描かれています。

    このシーンでも、健太郎が感情を抑えられずに仕事を早退して奈穂子の家に向かい二階にある彼女の部屋へよじ登ろうとする姿と、カエルが水槽から逃げ出そうとしている姿が重ねられていました。

    カエルを飼育している健太郎

    仕事を早退し奈穂子のもとへ向かって走る健太郎

    登場人物の話ついでに脇役にも触れておくと、所内でヤリマン呼ばわりされている同僚役の穂のか(バシタカの娘)がちゃんとブスとして出てくる辺りに度胸を感じました。

    ゲロ吐いたり突き飛ばされたり、なかなかヒドイ扱いを受けてました。

    あとは天雫家の隣人役のミヤちゃん(注:ハイトーンボイスで)の、いつの間にか家にいるずうずうしい座敷童みたいな感じが良かったです。

    なぜかいつも家の中にいる隣人(右手前)
    たぶん妖精かなにかだと思います。


    最後に一つ面白かったシーンについて。
    それは先にも書いた健太郎が交通事故に遭うシーンです。

    奈穂子の父と母がもめている間に奈穂子が誤って車道に出てしまい、車が近づいていることに気付いた健太郎が彼女を突き飛ばして自分が身代わりにはねられてしまうという展開。

    このシーンでは、事故が起こる瞬間には車は映りません。事故が起こった後の鳥瞰のショットで停止した車が映ります。
    撮影上のメリットとしては、はねられる瞬間のためにスタントマンを用意する必要が無いので、予算的にも技術的にも負担が軽くて済むというところでしょうか。

    このシーンでどのように事故を表現しているかというと、車のエンジン音と衝突音だけが聴こえるのですよ。
    つまり、観客は映画の画面を目で見つつも、視覚障害者の奈穂子と同じように音だけで事故を体験をしているという表現的に珍しいシーンだなと。
    考えすぎですかね。


    さて、「箱入り」ということで、作品には一切関係の無いこのMVで終わりにしたいと思います。

    Perfume "ワンルーム・ディスコ"

    佐々木彩夏 "あーりんは反抗期!"

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