『ペーパーボーイ 真夏の引力』予告編
いつものごとく、映画.comの作品紹介ページからあらすじを引用。
1969年、フロリダで暮らす青年ジャックは、問題を起こして大学を追われ、父親の会社で新聞配達を手伝うだけの日々を送っていた。ある日、大手新聞社の記者で兄のウォードが、ある殺人事件の死刑囚にかけられた冤罪疑惑を取材するために帰省。ジャックはウォードの調査を手伝い、その過程で出会った死刑囚の婚約者で、謎めいた美貌の持ち主シャーロットに心を奪われる。殺人事件をめぐる複雑な人間関係に巻き込まれたジャックの人生は、大きく変わっていく。
初めはまったく観る気が無かったんですよ。
なんかタイトルに「ボーイ」とか「真夏」とか入ってるからキラキラした青春ものっぽいし、さらに主人公がイケメンときたら、もう俺には一切関係の無い世界の話が展開されるのだろうなぁと。
主人公のジャック(ザック・エフロン) なんなのこのイケメン!こっち見んな! |
で、予告編を見たら、どうやら考えているものとは全く違う内容らしいと。画面がジメジメしてるし、ケバいニコール・キッドマンも出てくるし。
しかも監督が『プレシャス』のリー・ダニエルズということで観てきました。
婚約者である死刑囚の冤罪を訴えるシャーロット(ニコール・キッドマン) バービー人形みたいな化粧でビッチ感ビンビンでした。 |
話の軸にある殺人事件についての展開はこんな感じ。
- ある殺人事件の死刑囚ヒラリー(ジョン・キューザック)に冤罪疑惑
- ジャックの兄である新聞記者ウォード(マシュー・マコノヒー)たちが調査
- ヤードリー(デビッド・オイェロウォ)が証言者を見つけて冤罪を証明
- 実はヤードリーは裏切ってました
- 調べなおしてみたらやっぱりヒラリーが犯人でした
殺人事件の冤罪疑惑がかけられた死刑囚ヒラリー ニコラス・ケイジ主演のサスペンスにも出るみたいですよ。 |
ジャックの兄・ウォード 冤罪事件を追ってきた新聞記者。口元に傷が…。 |
「犯人の冤罪疑惑を追究して冤罪を証明、かと思って調べなおしたらやっぱり犯人がやってました」という『タブロイド』みたいな展開。
でも、この事件と調査そのものは重要ではないのです。
フジテレビのドラマ『タブロイド』 映画にはまったく関係ないですよ。 |
冤罪事件の調査を進めるにつれて、ヒラリーの住んでいる南部の湿地帯の奥地へと向かっていきます。この過程でジャックの周辺の人物の奥に隠された秘密も明らかになっていくのですよ。
湿地帯を進むウォードとジャック |
例えばウォードの相棒・ヤードリーは黒人であることで蔑まれないように「ロンドン出身」と偽っていたり、シャーロットにそそのかされてウソの証言者をでっちあげて名声を欲しがるような野心家であったり。
ジャックは黒人のメイドと仲が良く一見リベラルな物言いをしてるけれど、ヤードリーと対立した時にはNワードを口にしてしまうように少なからず人種差別の意識があったり。
ウォードはハードなマゾかつゲイだったり。
ヤードリーと殴り合いの喧嘩をするジャック 仲の良い黒人メイドの目の前でNワードを叫んでしまう気まずいシーン。 |
小説を読み進めるような展開が印象的だなと思っていたら、脚本に原作小説の作者であるピート・デクスターがクレジットされてましたね。
湿地帯の奥へと進むにつれて心の奥へと進んでいく…これは現代の『闇の奥』ですよ(知った風な口で)!気分はもうカーツ大佐ですよ!(関係ない)
舞台が1969年ということで、画質を粗くして撮っていたり、刑務所前のスペースにジャックが運転する車が入ってくるのを撮っている空撮が何となく昔の海外ドラマっぽく見えたり(何でそう見えたのだろうか?)という工夫がありました。
なかでもジャックがシャーロットとイチャつく夢(妄想?)を見るシーンでは、イチャつきとシャーロットの顔のアップショットをオーバーラップさせてました。
夢や妄想ならいくらでもCG使って幻想的な表現が出来そうなところを古典的な手法を使っているのは時代背景を反映させているのかと思ったり。
そういや『プレシャス』で主人公が妄想するシーンも変わった撮り方をしてたような。
シャーロットとイチャつくジャック(妄想) |
セットや衣装もレトロでカッコよかったですね。 |
面白いシーンというと、序盤にあるシャーロットとヒラリーのエアセックスは強烈。
ジャック、ウォード、ヤードリーが同じ部屋にいるにもかかわらず、事を始めてしまうというねw
シャーロットとヒラリーのエアセックス ヒラリーはシャーロットの向かいに手錠をかけられて座ってます。 |
一緒にいた三人の反応がそれぞれ違うんですよ。こんな感じ。
- ジャック:ポカーン
- ヤードリー:事が終わった後に大笑い
- ウォード:チンポジ修正
特にウォードのチンポジ修正は今年の下半期の名シーンの一つではないかとw
ただし、このシーンは後半に明らかになる秘密のヒントになっている重要なシーンでもあるのですよ。
画像でも分かるように、シャーロットの姿を見ているのはジャック(と彼女の向かいに座っているヒラリー)だけなのですよ。ウォードとヤードリーは少なくとも彼女の姿を見ていない。
そしてヤードリーは事が終わった後に苦笑することから、この出来事を気まずいものとしか感じていない。
ではチンポジを修正したウォードはどうか。
ヒントは「ウォードがどのタイミングでチンポジを修正したか」という点です。
ウォードのチンポジ修正の直前にあるのは、「ヒラリーが射精してズボンの右側の内腿に染みができる」というシーンです。ウォードはシャーロットの姿を見ていない、ウォードと並んだシャーロットの向かいにはヒラリーがいます。
つまり、「ウォードはヒラリーの射精を見て勃起した」というシーンなわけですよ。
ウォードのセクシュアリティは後半で突然明らかになるような感じだけれど、実は序盤から伏線が張られているわけです。
監督は黒人でゲイという、この作品ではどちらもマイノリティとして描かれるアイデンティティを持っているそうで。
もしかしたら、このシーン以外にももっと仕掛けがあるのかも知れないですね。
さて、ここまでに何回「チンポジ」と言ったでしょうかw
最後に、ペーパーボーイということで映画には全く関係の無いMVで終わりたいと思います。
a-ha "Take on Me"
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